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ファクトリーサイエンティストな人 第1回:FS協会 代表理事 大坪正人

2022年11月15日

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「ファクトリーサイエンティストな人」は、ファクトリーサイエンティスト協会(以下FS協会)の創設メンバーや理事・講師・TAをはじめとするFS協会に関わる人々を紹介するコーナーです。「ファクトリーサイエンティスト」って何?どんな人が関わっているの?という疑問や、それぞれのメンバーが「ファクトリーサイエンティスト」に込めた想いをお伝えしていきます。

第1回は、FS協会の代表理事の大坪に、協会設立の経緯や想い、これからのFS協会について、FS協会の事務局で広報を担当する西野がインタビューしました。

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事務局 西野:以下(西)ファクトリーサイエンティスト協会を設立したきっかけを教えて下さい。

(大坪)
2018年3月、3Dプリンティング等デジタルファブリケーション分野の研究で知られる慶應義塾大学の田中浩也先生とお会いした時に「現場の人に使われなければデジタル技術は機能せず、普及もしない」という問題意識を共有しました。そこでものづくりの現場でIoT等を利用した課題解決ができる人を「ファクトリーサイエンサイエンティスト」と名付け、育成プログラムの制作に協力しました。

2019年には慶應大学が中心となり、育成講座を開催しています。その後、より中立的な立場で社会へ展開するため、その運営母体として、2020年4月に一般社団法人ファクトリーサイエンティスト協会を設立しました。

当初は田中先生に代表理事をお願いする予定でしたが、現在の理事である長島聡さん(当時:ローランド・ベルガー日本代表)のすすめもあり、代表理事を務めさせていただくことにいたしました。

(西)大坪さんの普段のお仕事を教えて頂けますか?

大坪)
由紀ホールディングスという会社を経営しています。技術は一度途絶えてしまうと、再現ができなくなります。その技術が使われていた製品の需要がなくなったがために、失われてしまう技術もあります。そうした尖った要素技術を持つ中小製造業をグループ化することで、先端産業へ応用し、各社がその技術を磨くことに注力できるよう支援するホールディングス経営をしています。IT、IoTなどデジタル技術を生かした工程改善や広報機能・人事機能の共有など中小企業をプラットフォームで支援する取り組みです。

(西)今、どんなことに関心がありますか?

(大坪)
常日頃考えているのは、日本のものづくり業界が今後どうなっていくか、です。日本の製造技術は世界的にみても強いと言われていますが、世界的な競争力は残念ながら低下しています。スピード感を求められる業界では、日本は海外に追い抜かれていますが、製造業が培ってきた技術は簡単にコピーできるものではありません。昔からの技術の積み上げこそ、日本が持つ強みです。我々に何ができることは何か?を問い続けながら、日本の製造技術の土壌を守りつつ、技術世界に広めていきたいと思います。

(西)ファクトリーサイエンティストの魅力とは何でしょうか?

(大坪)
FS育成講座の受講者が「学んだ」ではなく「やってみた、やれる」という感覚を持ってもらえることが重要と考えています。まずは広く、手段として手に取るハードルを下げることが我々の役割です。少人数のグループにTA(Teaching Assistant)がついて、各自設定した課題に向かって実践的に手を動かせることも魅力ではないでしょうか。ここでできた仲間同士で情報を共有したり、事例を教えあったりするコミュニティとして育っていけば良いなと思っています。

ファクトリーサイエンティストは、何も特別な人たちではありません。 IoT化も難しいことではありません。「IoTで製造業を変えられる、こういうこともできる」、と目覚めた人
たちを増やすことで、組織全体のIoTの敷居を下げ、IoTを活用し、みなが支え合う世界にしていきたいです。

(西)ファクトリーサイエンティスト育成講座をどのような方に受講して欲しいですか?

(大坪)
当初は中小企業の現場・若手3年目~9年目という具体的な人物像を想定していましたが、始めてみると銀行員やソフトウェア、AI関連会社の方など多様な方が参加され、思いもよらぬ活用方法の発表には参加者はもちろん私も非常に勉強になります。

毎回興味深く最終発表を聞いていますが、講座のプログラムは工場の現場にとどまらず、誰にでも有効に使え、身近な例をIT化の題材にできます。発表で特に面白かったものでは、例えば、「オンライン飲み会で自分がどれだけ酔っぱらったかをセンサーで計測できる」、銀行の方が「リモートワーク中に自宅にCo2センサーをつけて換気をする」などの例がありました。工場でなくても使えると思います。

企業規模や事業内容、役職にかかわらず、デジタル化により、自らの業務を改善し、もっとよりよくしたいという問題意識、アイデアを持った方にご参加いただき「武器」を増やしてもらいたいと思っています。IoTを武器にする人・組織が社会全体に広がっていくといいですね。

(西)「10年後のFS協会」を、どのように描いていますか?

(大坪)
「ファクトリーサイエンティスト」という言葉が広く社会に認知されている姿を描いています。資格として認知されている。例えば、就職や転職の時に活用できる、工場ではファクトリーサイエンティストの資格を持つ人がリスペクトされている状態です。

例えば、工場長は「我々の工場は100人働いているから、5人はFSの勉強をさせて資格を取らせよう」、と考えている。工場場勤務者の中では、ある一定の割合でFSがいるのが当たり前となっている世界です。FS資格を取った人たちは、横つながりを広げ、情報を共有し合い、FS全体のレベルが上がっている状態になっているとよいと思います。

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取材担当の西野の一言
第1回の「ファクトリーサイエンティストな人」いかがでしたでしょうか? 
IoTという「武器」を一人一人が活用して、みんなで支え合う社会をつくっていこう。Small IoTから日本の製造業の底上げをしよう---ワクワクする、視界がぐんと広がるお話でした。
取材後に、FS育成講座の最終発表会に参加した大坪さんは、「基本のIoTキットからこれほど多様な使い方を考えられることに感心した。自分にもいろいろ発想が生まれてくる」とたのしげに講評されていました。
第2回は、TA(Teaching Assistant)の豊住さんです。おたのしみに。